メスシリンダー ルーツ探求の旅【ニコメド記事投稿祭】
この記事はニコメド記事投稿祭に合わせて投稿されたものです。他の記事も面白いものがたくさんあるので、ぜひご覧ください!
以前、ニコニコメドレー作者にインタビューシリーズをやっていて、メスシリンダー氏にインタビューしたことがありました。が、正直あまり内容の濃い記事にはできず、本人からもリベンジを要求されていました。当時の記事
一方、こちらとしても正直メスシリンダー氏のモノづくりはセンス依存の部分が大きいため、インタビューしてもうまく情報を引き出せないのではないかという懸念がありました。
そこで、今回はちょっと形式を変え、「メスシリンダー ルーツ探求の旅」と題しまして彼のアイデア・センスの源流に迫っていきたいと思います。
Ketoku:今回はメスシリンダー氏のニコメドの構成、アレンジなどについて、一体どこにルーツがあるのかを探ってみようという趣旨でやっていくね。
メスシリンダー:探られていきます。
いきなりですが、ルーツは探れませんでした(即落ち2コマ)
K:早速だけど、なんでニコメドを作り始めたとか覚えてる?
メ:全然覚えてないから昔のブログとか見てみたけどなんも書いてないや。
K:まじかよ…昔どんな子供だったの?
メ:覚えてないから知り合いから聞いた話しかわかんないけどボーッとしてて何もしてなかったっぽいよ。 中学のときの部活はテニス→文化部だったけど、小学校のそういう集まりだとたしかパソコンクラブみたいなのに入ってたと思う。家にパソコンはあったからね。なにやってたかは覚えてない。
K:ええ…好きな漫画とかはあった?
メ:パッと出てこないからダメだなぁ。同じ話を何回も読み返さないから、えっちなの以外基本一回読んだらもう読まないんだよな。
K:音楽は?
メ:覚えてんのは祖母の車のカセットプレイヤーが壊れてライオネルリッチーのRound And Roundしか流れんくなってたことくらいかな。
K:普通にいい曲じゃん…
音楽経験ないっぽいし、音楽好きな家でもないみたいだし、作り始めたきっかけは本当に謎だな。
メ:メドレーは多分人生ではじめてか二番目くらいに「やりたい」ってなったことかもね。将来の夢に「医者」って書かされてたりしたからな。
K:無茶振りすぎて笑う。
最近のメドレー作り
K:最近の話に目を向けてみよう。ニコニコメドレーをどういうときに作りたいと思う?
メ:決まってる訳じゃないけど、発作的に作りたくなる時と偶発的に作りたくなる時がある。他の人もそうだと思うけど他所のメドレー聴いた時とかね。
K:ちなみに作りたくなったメドレーを教えてもらっても…?
メ:衝撃を受けたのは【ニコニコメドレー】Nico<●><●>eyes*1。衝撃受けすぎて深夜に家飛び出して新宿まで泣きながら歩いた。
K:めちゃくちゃ衝撃受けてるやん。
メ:何で衝撃受けたかは泣きながら歩いたら忘れた。
K:インタビューがしにくい原因そのへんじゃんか…
重視しているのは「文脈」
K:メスシリが重視する要素とかある?
メ:文脈。例えば、前後左右のつじつまをあわせるより高い整合性を求めること、意味のない行為をしないこと。
前後左右ってのは繋ぎと重ねね。アレンジにもつじつまがあるからそこも整えつつ、曲の流れともぶつからないよう同時に整える、整えたい。
K:アレンジ・構成面において、無駄がない作品づくりを心がけている…って言い換えられる?
メ:無駄というか、こちらの意図しない違和感をどれだけ減らせるかみたいな。意図した違和感は演出として出すことがある。
わかりやすいので言えば、N+EVER!!の「蛹」→「乙女解剖」の部分。曲を急にぶち切ることで違和感を出して見てる人に「?」と思わせる。
K:なるほどね。
メ:「?」と思わせたからには必ず答えを導き出せるようにする、整合性のとれた違和感を出している。N+EVER!!のあそこで言えば「そこまでの流れ(ホラー味)」「暗室の映像」「ノイズ」「間」「次の曲群(乙女解剖/ぱらぱら/長く短い祭/donut)」がないと、本当に違和感になってしまうし必要ない。
K:もっと言うならそれも文脈だよね〜。無駄を無駄にしないというか。
メ:そう。あとあそこは長く短い祭のパロディでもあるので、知ってる人は「ああここはバラバラ殺人の現場で今犯人は被害者の乳房を食ってるとこなんだな」という所まで文脈の間を読めると思う。
大事なのは深く作りこむことで詳しく知らない人からしても整合性のあるストーリーになるということ。制作において必要ないと言われれば必要ないけど、あるとつじつまが合わせやすくなる。アニメキャラクターの細かな設定のほとんどはストーリーに関与しないけど、その設定一つ一つがそのキャラを作り上げてると思えばおのずと物語が出来上がる、みたいな。
こんな面倒くさい作り方するな。
K:いやー重要だと思うよ…わかりやすいところでいくとエヴァとかそうだしね。
メ:メドレーの元手にしようと宗教とか民俗学とか勉強したくて本買いまくったけどわけわからんチンでダメだった。
ここらへんこじらせ始めたのは最近のことよ。昔は少なくとも重視はしてなかったかなぁ。ただただメドレーを作るのが楽しかったからな。
K:それもわかる。
メ:メドレー作るの楽しくないからな、どうにか作りこむ理由を注ぎ足し注ぎ足ししてるよ。
K:そう言わないで…
文脈重視になったきっかけ
K:文脈重視になったきっかけとかってあったりする?
メ:苦行を少しでも華やかにしようと…というのもあるけど、まぁ「お話を作るのが好き」だからかな。
K:どのタイミングでそうなったの?
メ:メドレーと並列でお絵かき趣味もあるんだけど、ソコが「絵だけ」から「漫画も描くようになった」くらいの時期にちょっとメドレーでも文脈意識し始めた感じあるね。漫画描き始めたのって同人誌からだし、もしかしたら根本的に「自分の好きな物を作る」から「他人に見せる物を作る」に変わったのかもしれんね。艦これのキャラが好きで同人誌を作り始めたけど、同人誌という形にして頒布する以上読み手の事を考えざるを得なくなった。多分はじめてちゃんと受け取り手の立場になってモノづくりをしたと思う。
あとその頃メドレーでも依頼されて作る案件が少しずつ出始めたことも重なったと思う。
K:時期的にも重なってたんだね。そこで受け取り手のことを考えた時に、やっぱり重視したいのは文脈だということになって、今のメスシリメドレーが生まれているというわけか。
メ:「どういうものが面白いと感じてもらえるか」の一つが文脈を掘り下げることであって、他にもいろいろあるかもしれない。面白いものを作っていきたいね。
その一環がメド島レビュ子*2であったり今作ってる原曲不使用音MADメドレーであったりする。色々な観点から見ればまだまだメドレーには隠れた魅力があるはずだしね。
K:いろんな要素が詰まっているというのもニコメドの良さなんだよな。
メ:そう、その良さを引き出してあげて聴き手に伝えるのが作者の仕事だと思ってる。
K:いいこと言うじゃん!一時はどうなることかと思ったよ。
メ:今裸だけど。
K:台無しだ…
結局メスシリンダー氏のルーツに迫ることはできませんでしたが、彼のクリエイターとしての思想を垣間見ることができたと思います。また、幅広い発想の源には様々な音楽やコンテンツがあるようなので、彼のようなメドレーを作りたい人はインプット量を増やすのも一つの方法ではないかと感じました。 また、「深く作り込むことでその内容を知らない人にとっても整合性のあるストーリーになる」という部分は映画や漫画などでよく見られる発想で、それをニコメドにも持ち込むところが興味深く感じました。彼がニコメド記事投稿祭に合わせて投稿した記事「絶対にオススメしないメドレーの作り方:背筋を鍛えたいのブロマガ - ブロマガ」(リンク切れ)もこの発想についての内容になっていました。
ちなみに、インタビュー中に出てきた「原曲不使用音MADメドレー」は完成するかわからないそうです。ゆるりと楽しみにしておきましょう。